2018年IT業界/SIerの将来性を見る 〜今後の動向、崩壊論の実現可能性〜

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今年1番読まれた記事

先日のITproで『2017年によく読まれた記事ランキング』が掲載されました。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/17/120700565/122000010/?ST=spleaf

1位は裁判沙汰『失敗の全責任はユーザー側に、旭川医大とNTT東の裁判で逆転判決』でした。

IT業界に限らず、競争が激しい業界ではどんなビジネスでも『お客様は神様』と自分で勘違いする取引相手に悩まされるものです。

SI業界では特に『デスマーチ』という言葉もしばしば耳にします。

『SIビジネスは崩壊する…』

そんな話が出るくらい、今のSIerを取り巻く環境は良くありません。

ですがこの判決は、そんなSIerたちに勇気を与え、そして今後のSI業界の見通しを変える希望ではないかと個人的に思っています。

なぜこの記事がアクセスを集めたのか?

まず、この記事が多数のアクセスを集めたのは、現場SEの共感・支持を得たからではないでしょうか。

私自身がSE側の立場であるため、そのバイアスがあることは否定しませんが、冷静に見ても、NTT東日本の現場対応は間違いないものだったと思います。

本来であれば顧客の追加要望等は飲まなくても良いのですが、客商売もあり、無碍な対応をすればあっという間に他の顧客に伝わります。『まあこれくらいなら、、』という程度であれば要望を飲むという選択肢はあります。ただ、これは商売上手か(お互いWIN-WINを築けるか)どうか、という範囲での話。

営業経由で『あっちの会社のほうが条件がいいから、嫌なら変えるよ』という顧客の声を最近よく聞きます。

値段を下げるなら良し、下げないなら対抗馬のベンダに『デグレしないこと』と条件を付けて契約し、仕様に明示されてないものでも平気で『前は出来てたからデグレしてる』と主張し、『これじゃ検収できない』と脅し、要求を飲ませようとする。

こんなやり取りも散々聞きましたし、実際そのような経験もしました。

今やSIerは競争に勝つために身を削り、削った分を顧客が自分の取り分にしているように思えます。

公正なやり方でやる分には構いません。しかし最近個人的に特に許せないのは以下の性質の顧客(IT室の人間)です。

  • 自分にベンダコントロール力があると勘違いし、→実際には技術力の伴わないベンダいびり能力
  • 社内調整をせず(できず)→協力義務違反では?というレベルのものも
  • 要求仕様から漏れていたことは『こちらのことを理解できていないあなた方が悪い。ヒアリング不足。』と一蹴し→お客様(自分)は神様だと勘違い
  • 自分たちのミスには笑いながら一言だけ謝り(そもそもあまりミスを認めない)、ベンダが失敗した際には激怒したりネチネチ文句言う→契約は組織と組織の『対等な』関係が前提にあるもの。そして担当者は契約の主体ではなく、あくまで組織の窓口。

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日本のIT業界/SIerを取り巻く環境

設計と構築を分離しないIT業界

建築業界では『設計施工分離の原則』という原則があります。この原則は『設計を行う会社と施工を行う会社を必ず分ける』というものです。

つまり、まず建物の『設計』を先に設計会社の中から業者選定、契約し、その設計を基に、施工会社の見積りを取得し、業者を選定するのです。

ですがSI業界にはこのような習慣はありません。コンサル会社が入って設計(IT業界では『要件定義』とも呼ぶ)だけを行うこともありますが、あまり見かけません。

実態は『設計・構築・責任をベンダ丸投げ』が多いです(全てがそうでは無いというのも事実ですが)。

設計をするには顧客がそのシステムをどう使うかを把握する必要があります。本来これは顧客担当者の責任範疇ですが、ベンダが手伝うのが慣例化しています。そしていつからかそれが当たり前になり、責任がベンダ側になるのです。

その結果、裁判にもあるように、担当者が使い方不明のシステムの仕様書を書いて業者選定・発注し、金額が決まった後に具体的な使い方をする人たちとの打合せが始まって『こうしてくれないと困る』と言い出し、シワ寄せがベンダに来る、という構図が出来上がるのです。

それでもひと昔前までは顧客が(予め、もしくは追加で)お金を積み上げてくれることも多く、業者はそのプール金でなんとか凌いでいましたが、最近ではそれもあまり見なくなりました。

神経質な日本人

海外メーカ製品を納品し、その製品の不具合対応時には毎回、日本と海外の温度差に苦慮します。

日本人は製品に完璧を求める傾向・度合いが強いですが、海外では『これくらいなら気にしない』と割り切る傾向にあります。ある種、日本の美学なのでしょう。

前述の『こうしてくれないと困る』というのは意外とユーザ本人が運用で1手間2手間くらいすれば解決する問題だったりするのですが、それでも完璧を求める日本人からは許されないこともままあります。

アベノミクスはいずこへ

アベノミクスでは景気を良くし(つまりお金の巡りを良くし)物価を上げようという政策のはずですが、公共・民間問わず、設備投資等の予算が増える話は滅多に聞きません。

国の政策に合わせて公共くらいは予算を増やしてもいいはずなのですが、それもなかなか目に見える形には現れません。

その結果、現場レベルではやりたいことが増える(仕様の内容が濃くなる)のに予算は前回の額が閾値だったりするので業者同士を過剰に争わせ、価格低減を図るのです。先程も言いましたが、公正なやり方ならいいんです。

悲劇を繰り返さないためには

顧客とベンダ、お互いに冒頭の裁判のような悲劇を産まないためには何が必要でしょうか。

私が10年間SEをしてきて思うのは、単体契約を超えて、『お互いが対等な関係であることの再確認』、『顧客とベンダの責任の明確化』、『設計・施工の分離』、『顧客とベンダの衝突シナリオとその対策(事前、事後含む)のKB(Knowledge Base)作成』を行うことが現状を変える第一歩だと思っています。

つまり国が率先して上記の内容を含んだ『SI事業に関するガイドライン』を作成するのです。

これで全てが解決するとは到底思えませんが、SI業界を復興させるためにまず必要なことなのだと思います。

今回の事件が、顧客とベンダのお互いが自ら省み、お互いを尊重し、これらのことを真剣に考える良い機会になることを願わんばかりです。

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