ダイナミック・ルーティング・プロトコルの種類
ダイナミック・ルーティング・プロトコルはまず大きく IGP と EGP の 2 種類に分類されます。
IGP (Interior Gateway Protocol)
主に 1 つの組織で管理されるネットワーク内の範囲で使われるルーティング・プロトコルです。1 つの組織とは、例えば会社内であったり家庭内であったり ISP 内のことです。
具体的には RIP、OSPF、EIGRP が該当します。日本ではあまり使われていませんが、IS-ISというものもあります。また、今は使われていませんが、IGRP という Cisco 独自のプロトコルもありました (EIGRP に置き換わっています)。
EGP (Exterior Gateway Protocol)
主に複数組織間で協調し合う (つまり管理者が分かれているネットワーク同士を接続する) 際に使われるルーティング・プロトコルです。複数組織間とは具体的には主に ISP 間のことですが、社内の異なる管理組織 (海外拠点等) の可能性もあります。
実際に利用されている具体的なプロトコルは BGP のみです。また、今は使われていませんが、EGP というものもありました。
クラスフル・ルーティング・プロトコルについて
RIP version 1もそうですが、IGRP や EGP はいわゆる『クラスフル・ルーティング・プロトコル』に該当する、古いプロトコルです。
クラスレスとクラスフルの狭間の時代を経ているため、FLSM でのネットワーク設計しなければならず、今や実装されている機器はまずないでしょう。
後継の EIGRP や BGP がクラスレス・ルーティング・プロトコルであり、こちらが利用されます。
RIP の特徴、利用シーン
RIP は隣のルータへ自身が持つルート情報 (NW セグメント) およびそこまでの距離 (経由するルータの数) を伝えるだけの単純なルーティング・プロトコルです。伝える情報が距離だけなので、ディスタンス・ベクター型と分類されます。
単純な仕組みゆえ、CPU やメモリの負荷が小さいのが特徴です。
RIPv2 は末端だけ冗長経路となるような簡易かつ小規模な NW 構成での利用が適しています。
一方、途中の経路が冗長となっている構成は苦手で、場合によってはルーティング・ループを引き起こしてしまいます。
OSPF の特徴、利用シーン
RIP でルーティング・ループが発生してしまう根本的な原因は『ルータが、隣のルータから、さらに奥にあるルータの噂を聞くだけ』で、ルータ自身が全体像を把握していないことです。
OSPF ではこの弱点を克服すべく、伝える情報に『各ルータがどの速度(コスト)で接続されているか』を含めており、この情報を元に、全てのルータが共通の『ルートの全体像を記載した詳細地図』を作ります。
これにより、障害時には RIP のようなルーティング・ループを引き起こすことなく、短時間での切り替えが可能になります。
ただし、その代償として CPU やメモリの負荷は RIP に比べて大きくなります。ただし、よほど大きな NW でなければ、今のルータのスペックであればあまり問題視されないレベルではあります。
RIP のディスタンス・ベクター型との対比で、OSPF はリンク・ステート型と分類されます。
EIGRP の特徴、利用シーン
EIGRP は Cisco 独自のルーティング・プロトコルですので、EIGRP を使うルータ全てが Cisco ルータでなければなりません。RIP の弱点を補いつつ、OSPF のような高負荷を抑えることができる、RIP と OSPF の中間的なポジションです。
ただし、前述の通り、最近はルータのスペックも上がっており、よほどの NW 構成でなければ OSPF でも十分耐えられるので、あまりメリットは無いと思います。
BGP の特徴、利用シーン
BGP は主に ISP 間等の『管理者が異なるネットワーク同士を接続する』際に使われます。
ISP 同士をつなぐケースが一番多いですが、企業からインターネットへ抜ける ISP 接続をマルチホーム (つまり ISP を 2 つ使う構成) にしたい、というケースでもよく使われます。
ISP-B のルーティングについては、BGP ではなくフローティングスタティックによる構成でも問題ありません。
また、同一組織内であっても、WAN 経由でトラフィックを制御したい場合などで使われます。
RIP/OSPF/EIGRP 等と比べた時の BGP の大きな特徴は『TCP のユニキャストで情報を交換すること』です。これは、TCP の高信頼性の特性を活かし、長距離のルータ間で安定したルート情報交換ができるようにするためです。
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