UPS・電源の設計
NW 機器やサーバを導入する際に意外と漏れがちなのが、UPS・電源設計です。
- NW 機器やサーバを設置する場所に電源はあるのか?
- その電源は機器のプラグと接続できる形状の電源なのか?
- サーバ更改時、データ移行等により一時的に併設期間がある場合、両方の電源が確保されているか?
現場ではこの観点での考慮漏れがよく発生しています。
本記事では UPS 周りの基礎知識や仕組み、設計のポイントを分かりやすく図を使って解説します。
UPSとは?
UPS とは Uninterruptible Power Supply の略です。
UPS は、予期せぬ停電時にサーバ等の HDD を搭載した機器を安全にシャットダウンするために時間稼ぎをし、また、UPS 用ソフトと連携してサーバを自動でシャットダウンするシステムです。
停電時に電源供給できるのは長くても 1 時間程度なので、停電している間にずっと UPS で電源供給することを期待してはいけません。(そのケースもあるでしょうが、それよりも長引いても問題にならないようにサーバを安全に停止するシステムのほうが有益です)
UPS設計のための基礎知識
製品仕様の見方 例1. Smart-UPS 1500
ここでは Schneider 社の Smart-UPS 1500 を例に、UPS 設計を踏まえた製品仕様を見るポイントを紹介します。
Smart-UPS 1500 の入力電源(つまり壁のコンセント等)は、一般家庭にもみられる NEMA 5-15 というタイプの電源規格です。ただし、一般家庭では通常2口ですが、オフィス用によく見かける 3 口タイプが標準です(もちろん、2 口に変換することもできますが)。
なので Smart-UPS 1500 の場合は入力電源については、電源があるかどうかを気にすればよく、形状についてはあまり意識する必要はありません。
この NEMA 5-15 というのは 電圧:100 [V (ボルト)]、電流:15 [A (アンペア)]の電気に対応している、という意味です。
定格電力 (VA) は電圧と電流の掛け算なので、1500 [VA] となります。つまりSmart-UPS 1500 の 1500 は入力の定格電力を意味しています。
では出力 (つまりサーバ側への電源供給) はどうなるかというと、1200 [W (ワット)] となります。
これは簡単に言うと、せっかく 1500 [VA] で入ってきても、一部の電圧×電流 (このケースでは 300 [VA] 分) は仕事をせずに復路を使って電源供給元 (電力会社) に戻っていくからです。これは電圧と電流の位相のズレによって発生します。
上記を踏まえ、UPS の仕様書で見るべきポイントは以下 3 つです。
出力電力容量:1200W
出力接続:(6) NEMA 5-15R (R はメス口の意味)
つまり、入力電源として NEMA 5-15P の電源プラグ (オス口) が 1 つあり、出力側は NEMA 5-15R の電源コンセント (メス口) が 6 つある、ということが書かれています。
サーバや NW 機器を最大 6 台直収することができます。ただし、出力は 1200 [W] なので、500 [W] 程度の消費電力の製品が多いサーバ類は 2 台が限界ですので、空きポートが出来ることが多いです。
逆に NW 機器は 100 [W] 程度のものが多く、OA タップなどを分岐して 6 台以上を収容することができます。
製品仕様の見方 例2. Smart-UPS 3000
Smart-UPS 3000 も基本的に 1500 と同じですが、大きく違うのは、入力電源です。
NEMA L5-30 という規格になっていますので、導入する際にはこのタイプの電源がサーバ設置箇所にあるかどうか、無い場合は電源盤に 100V30A 用の空きがあるかを確認した上で、誰がその工事をするか、といった事前整理が必要となります。
NEMA L5-30 は 電圧:100V、電流:30A のものです。お分かりの通り、なので 3000 なのです。ちなみに L はロックを意味し、電源を差した後に右に回してロック (外れ防止) をすることができます。
先程の通り、以下 3 ポイントを見ます。
出力電力容量:2400W
出力接続:(2) NEMA 5-20R , (6) NEMA 5-15R (R はメス口の意味)
前述の通り、電源の入力としては NEMA L5-30P の電源プラグ (オス口) が 1 つあり、出力側は NEMA 5-20R が 2 ポート、NEMA 5-15R が 6 ポートあります。NEMA 5-20 は稀なので使うことは少ないでしょう。
UPSの標準的な設計
UPS は一般的に以下のような構成にします。
まず電力会社からの電源が断たれた場合、まずは UPS から『電源供給が断たれたよ!UPS のバッテリでサーバへの電源供給は続けるよ!』というアラートメールを飛ばします。
飛ばし先はどこでも構いませんが、セキュリティポリシー上問題にならなければ、停電後もメール受信できるように外部メールサーバが良いでしょう。
ただ、停電はすぐに復旧する可能性もありますので例えば 3 分間様子を見ます。3 分経過しても復電しない場合、UPS からサーバへシャットダウンの命令を TCP で送信します。
サーバにインストールされた UPS 用のエージェント (Smart-UPS であれば PowerChute Network Shutdown) がその命令を受け取り、サーバのシャットダウンを開始します。
ただしここで注意が必要なのは、UTM やアプライアンスサーバ等で HDD を持ち、かつ PowerChute Network Shutdown のインストールができない製品です。
これらの製品は、PowerChute Network Shutdown をインストールしたサーバ上に、シャットダウン用のスクリプトを用意しておき、シャットダウン命令を受信したとき、そのスクリプトを実行してから自らをシャットダウンさせる、といった設定をしておく必要があります。
なお、UPS からのメール発報、サーバへのシャットダウン命令、SNMP での管理などの機能は、UPS 毎にオプションの『Network Management Card』を購入しておく必要があります。
UPSへ収容する機器について
以上のことから、UPS へ収容する機器には以下があることが分かります。
2. UPS から各サーバまでの経路上の NW 機器
3. メールサーバまでの経路上の NW 機器
また、UPS には、『商用電源で瞬断 (1 分以内の電源断) があった場合でも安定した電源供給を行う』という役割もあります。これらを考えると、おそらくサーバ室にある機器は全て含まれるでしょう。
UPSのバッテリ運転可能時間(ランタイム時間・バックアップ時間)
商用電源の電源供給が断たれた場合、サーバへの電源供給は UPS のバッテリで行うことになりますが、この場合、接続するサーバの総消費電力によって時間が異なります。
例えば Smart-UPS 1500 や 3000 の場合は以下のようになります。
先程の例では 3 分間様子を見る、と書きましたが、収容する機器の消費電力が大きい場合はそもそも 3 分間も持たないケースすらあります。
UPS を設計する際には、各サーバがどのくらいの消費電力なのかを調べ、それに収まる UPS を選定するだけでは不十分です。
最近では仮想サーバの環境が当たり前なので、全ての仮想サーバをシャットダウンするまでにどれくらいの時間が必要かを想定し、その想定時間を持たせるためにどのくらいの UPS を選定すればよいか、まで考えなければなりません。
コメント
こんにちは
勉強になります。大変、参考にさせて頂いております。
家庭用コンセントは、2口が多いのですが、配線規格上では2口の合計が1500Wだったはず?と記憶しております。
ですので、コンセント2口に2台のUPSを接続すると、規格の範囲外になるかと思います。
UPSの2台構成では、別々のコンセントから電源供給するか、新たに電源工事が必要になると思います。
図での説明では、ご存知かと思いますが、電気工事士等の知識がない素人ですと、同じ配線のコンセントに2台接続すると思われます。
注意点として、記載してみてはいかがでしょうか?
かめさん
コメントありがとうございます!
確かに、、改めてみるとその点には触れてないので、最初の図をみて誤解するかもしれませんね。。
せっかくなので1つ図を作って追記してみようと思います!
他のページでも気になることがあったらぜひぜひどんどんご指摘ください!