アドミニストレーティブ・ディスタンス(AD)とは
アドミニストレイティブ・ディスタンス (以降、AD) とは、あるネットワークアドレスについて、2 つ以上の異なる NextHop を示すルーティングがあった場合、どのルートを優先するかを決める値のことです。
AD 値が低いほうが優先されます。
アドミニストレーティブ (Administrative) の意味は、「管理された・統制された」という意味合いです。この値を設定することでルーティングの統制を取る、というニュアンスでしょうか。
AD 値はスタティックルートか、OSPF か、RIP か、EIGRP かによって、また、再配布されたルートなのかどうかによって、デフォルト値が決まっています。この値は設定によって変えることができます。
例えば以下の NW 構成でデフォルトの AD 値を使った場合を考えます。
RIP の AD 値は 120 であるのに対し、OSPF の AD 値は 110 であるため、同じ NW アドレスであれば OSPF が優先されます。
ただし、全く同じ NW アドレス、サブネットマスクでないと比較はされず、別のエントリとしてみなされます。
なので 200.200.200.128/25 は 200.200.200.0/24 と比較されることなく、ルーティングテーブルには RIP で学習したものが採用されます。
あとはロンゲストマッチに従ってルーティングが為されます。つまり、AD 値よりもロンゲストマッチのほうが優先されるのです。
ここで、各ルーティングプロトコルの AD 値を以下に示します。
プロトコル | AD値 | 備考 |
---|---|---|
Connected | 0 | 直結ネットワーク |
Static | 1 | スタティックルート |
EIGRP summary | 5 | 集約ルート(Nullの理由) |
eBGP | 20 | 外部ASからのルート |
EIGRP Internal | 90 | |
IGRP | 100 | |
OSPF | 110 | |
IS-IS | 115 | |
RIP | 120 | |
EGP | 140 | |
ODR | 160 | On Demand Routing |
EIGRP External | 170 | 再配布ルート |
iBGP | 200 | 同一AS内からのルート |
NHRP | 250 | Next Hop Resolution Protocol |
なお、OSPF や EIGRP では、ルート集約時に集約をしたルータ上で Null へのルートが自動生成されます。
これは、ルーティング・ループを回避するためです。詳細は以下をご参照下さい。
フローティング・スタティック(フロスタ)
フローティング・スタティックとは、わざとスタティックルートの AD 値を高い値に設定して優先度を下げてルーティングプロトコルによるルートを優先させておき、障害時にはルーティングプロトコルによるルートの配布が途切れ、自動でスタティックルートに切り替わる、という NW テクニックです。
併用するルーティングプロトコルは RIP でも OSPF でも EIGRP でも BGP でも、何でも利用可能ですし、デフォルトルートに適用することも可能です。
具体的には以下のような構成が考えられます。
ポイントは、本来 [ AD 値 = 1 ] であるスタティックルートを [ AD 値 = 130 ] にわざとセットし、通常時は RIP がスタティックルートよりも優先される構成にする、というところです。
これにより、通常時は RIP のルートを使わせ、R1 の障害時にはスタティックルートによる R2 への迂回ルートがフローティングして (浮かび上がってきて)、ルートの冗長性を確保することができます。
なのでフローティングスタティックの切り替わり時間は、併用する動的ルーティングの切り替わり時間に依存します。
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