無線LAN (Wi-Fi)

【図解/無線】チャネルボンディングとMIMO/MU-MIMOの仕組みと違い ~メリット/デメリット,80MHzと干渉~

基礎知識:チャネルとサブキャリア

無線 LAN (Wi-Fi) では 2.4 GHz 帯と 5 GHz 帯を使って相手と通信します。具体的には、これらの周波数帯の中からさらに 20 MHz の幅をもつ『チャネル (ch)』を使って通信します。

2.4 GHz 帯は最大 4 チャネル、5 GHz 帯は 19 チャネルが使えます。

現在の無線は OFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplex) という技術が使われており、この方式では 1 チャネルの 20 MHz 幅の中にさらに小さい帯域で区切った複数の小さい波『サブキャリア』を作り、それらが bit 情報を伝達します。

IEEE802.11a/g/n/ac では 1チャネル (20 MHz) の中に 312.5 KHz のサブキャリアを 63 個作ります。

この中のいくつかはチャネル干渉を緩和するために未使用 (ゼロサブキャリア)、いくつかはチューニングを行うためのパイロットサブキャリアです。

もう少し詳しい説明は以下のページを参照下さい、

【図解/初心者向け】無線LAN(wifi)の仕組みと基礎/原理~規格の歴史,種類,速度について~
無線LAN (Wi-Fi) の規格と速度理論値 無線 LAN の最新規格 IEE...

チャネルボンディングの仕組み

チャネルボンディングとは

IEEE802.11n 以降では速度向上のために、『チャネルボンディング』と呼ばれるサブキャリア数を増やす手法が実装されました。

仕組みとしては単純で、11n 規格では 1 チャネルの 20 MHz の場合は 52 個のサブキャリアを含めますが、2 チャネルを束ねて 40 MHz 幅として 108 個のサブキャリアを使えるようにできるのです。

チャネルボンディングでは隣り合うチャネルを連続して使うことができるため、分割損が無くなります。隣のチャネルの通信相手が異なる場合は干渉してしまいますが、チャネルボンディングでは両チャネルが同じ通信相手であるため、OFDM による効率化的な分離が図れるのです。

これによりデータ搬送用サブキャリア数は 2 倍より多くなり、速度は 2 倍以上(108/52 倍) になります。

チャネルボンディングのメリット・デメリット

チャネルボンディングを使うメリットは速度向上です。おおよそ束ねるチャネル数だけ速度が乗算されます。(実際には乗算よりやや速い)

一方、デメリットは利用チャネル数が少なくなり、干渉が発生しやすくなることです。その結果、逆に速度が遅くなる等 NW が不安定になる可能性もあります。

例えば 5 GHz 帯では通常では 19 チャネルを使うことができますが、2 チャネル (40 MHz) のボンディングを有効化すると、使えるチャネル数は、ボンディングされたチャネルが 9 チャネルと、通常のチャネルが 1 チャネルになります。

さらに 4 チャネル (80 MHz) のボンディングを有効化すると、使えるチャネル数は、ボンディングされたチャネルが 4 チャネルと通常のチャネルが 3 チャネルになります。

さらには 8 チャネル (160 MHz / 80+80 MHz) のボンディングを有効化すると、使えるチャネル数は、ボンディングされたチャネルが 2 チャネルと通常のチャネルが 3 チャネルになります。このときは 6 台の AP が近くにあると必ず影響の大きな干渉が発生します。

なので多くの無線 AP や無線 PC が密集する場合は 2 チャネルボンディング程度に抑えるほうがお奨めです

逆に無線 AP も無線 PC も少ない場合は積極的に使えます。

MIMO の仕組み

MIMO とは

MIMO とは Multi-Input/Multi-Output のことで、『同一周波数帯の信号をアンテナの数だけ同時に送信する』技術です。 例えば無線 AP と PC が共に、MIMO 用のアンテナを 2 個搭載していれば転送速度は 2 倍になるし、アンテナが 3 個なら 3 倍、4 個なら 4 倍となります。

MIMO はチャネルボンディングとは全く原理・仕組みの異なる技術であり、MIMO はチャネルボンディングと同時に利用することが可能です

MIMO は速度向上だけでなく、精度向上にも貢献します。これは音に例えると、『色々な人が発声する中で、1つの耳で特定の 1 人の声を聞き分けるより、2 つの耳で 2 人の声を聞き分けるほうが易しい』ことを表す『両耳効果』と似ています

MIMO のモデル式は以下の通りです。少し乱暴に訳すと、1 つの送信信号が複数の受信アンテナでどのような特性で伝わるかを推定することで、元の送信信号がどのような波形であったかを知る手がかりがアンテナの数だけ存在するわけで、精度を高めることができるのです。

MIMO では伝送特性を示す行列 H の逆行列 I を推定します。推定には無線ヘッダ(プリアンブル)やパイロットサブキャリアが使われます。

MIMO のメリット・デメリット

MIMO のメリットもやはり速度向上です。アンテナの数だけ速度が乗算されます。

一方、デメリットは技術的には特にありませんが、コストが掛かることです。そのためか、11ac や最新規格の 11ax では 8 アンテナまで対応していますが、8 アンテナを実装している機器はあまり見かけません。

なお、MIMO を使うためには無線 AP と無線 PC の両方が複数アンテナを持っている必要があります。

片方が 3 アンテナであってももう片方が 2 アンテナしかなければ、2 アンテナ分の速度しか出ません。

DL MU-MIMO

IEEE802.11ac では DL MU-MIMO (Down Link Multi-User MIMO) という機能が追加されました。

従来の MIMO では、1 つの無線 APと 1 つの無線 PC が常に 1 対 1 で複数のアンテナを使いますが、DL MU-MIMO では 1 つの無線 AP から複数の無線 PC に同時に通信することができます。逆方向(複数の無線 PC から無線 AP に通信する)の MU-MIMO を UL MU-MIMO (Up Link Multi-User MIMO) と呼びますがこちらは少々難易度が高く、次期規格 IEEE802.11ax で使えるようになる見込みです。

従来の MIMO 方式では 1 台の無線 AP は必ず 1 台としか通信できなかったため、無線接続する端末数が多くなると 1 台あたりの通信機会がおおよそ反比例し、速度低下を招くのが長らく課題でした。ですがこの方式によって同時通信ができるようになりました。

無線の同時接続数問題を解消する流れは、IEEE802.11ax でも引き継がれており、DL MU-MIMO に加え、3つの同時通信方式『UL MU-MIMO』や『DL OFDMA (Down Link Orthogonal Frequency Division Multiple Access)』、『UL OFDMA (Up Link Orthogonal Frequency Division Multiple Access)』の実装がされる予定です。

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